「もし、この国をよくしたいと思うなら、そして、子供たちの人生に影響を及ぼしたいと考えるなら、教師になりなさい」(オバマ大統領)

2015年10月07日

このスピーチは、オバマ大統領による2011年の一般教書演説の一部です。
アメリカ社会でも、そして日本でも、「教育」は国の根幹を支える重要なテーマです。当然、「教師」への期待も大きく、教員養成課程を置くこども学科の責任も重いなあと、私はこのフレーズから改めて感じました。

こども学科では、こどもの視点になって考え、問題を解決していくことのできる「こどもスペシャリスト」の養成をポリシーに掲げています
そのための学びの中心であるフィールド演習(2年次:『フィールド基礎演習』、3年次:『こどもフィールド演習』)活動に込めた私たちの願いを少しお話しておきましょう。

フィールド演習は、地域へ出て様々な保育・教育機関や各種団体で働く人々の実際の活動を見聞し、自身も実践的な活動に参与させて頂きながら、卒業研究へと高めていこうとする欲張りな企画なのですが、ひらたく言えば、「こどもたちとかかわる現場で活かされる力」を養うのが目的です。 教科教育法など専門領域のスキルを座学で修め、同時に、全人レベルでこれらを統合して児童に関わっていく力を身につけていこうとする意義があります。実際の教室での学習指導では、教師は、個々の児童と取り結んだ人間関係を、集団としての「指導者-学習者」の関係に再構築していく必要があります。発問をすれば、児童の応答があり、また児童同士の意見の関わり合いから、教師は状況を的確に把握して彼らの思考を深めていく手立てを瞬時に判断する必要があります。学生には、現場のベテランの先生方がこれらのプロセスにどう立ち向かっているのか、リアルに見聞してきて欲しいと願っています。 このような活動は「正統的周辺参加(Legitimate Peripheral Participation: LPP)」」と呼ばれます。
現場の活動に自身も貢献し「参加」することを通して責任感や主体性を獲得しアイデンティティ形成ができるのだという考え方です。


現在、こども学科のフィールド演習で連携している地域の関係機関は100事業所にのぼるようになりました。地域のこどもたちと共にパステルカラーのポロシャツを着た学生の姿がどこにでも見られる風景となりました。今後も、本学の地域貢献活動のひとつのモデルとして、こども学科の“サービスラーニング”はその裾野をますます広げていきたいと考えています。

写真(1)

写真(2)

実は私自身も、星稜ジャンププロジェクトで「ワークショップ・キャラバン隊」と名付けた授業実践の取り組みを始めたのはそんな願いがあったからです。小学校の授業で、教科書のねらいをもっと魅力的な教材から迫ることはできないか、そのためにどのような工夫をすればよいのだろう、と学生たちがアイデアを出し合い、一緒に教材を創り、そして実際に授業をさせて頂く。
こども学科の第2期生からゼミ活動の柱として開始し、今年の3年次ゼミが第7期生の代になります。

写真(1)は、その記念すべきキャラバン隊の活動第一回、社会科で世界のいろいろなお米を体験する授業でした。古代米やイタリア米を入手し、当日の朝早くからおにぎりにして準備しました。写真(2)は、今年の7月に行った「水道水の秘密」の授業で、消毒されて安全な水になった水道水を判別する実験を行いました。

こんなワークショップを通して、学生には、「こどもを大切にし、現場に花を咲かせる教師」に成長していってほしいなあと願っています。

大学

井上 好人
INOUE Yoshito

プロフィール

滋賀県大津市生まれ。滋賀大学教育学部卒業。
滋賀大学大学院教育学研究科と京都大学教育学研究科の2つの大学院を修了。
滋賀県公立中学校の教員。当時は80年代“ヤンキー”の全盛期で、荒れる生徒たちの心をどうやったら掴めるのか、学力や進路をどうして保障してやったらいいのか、毎日忙しく駆けずり回っていた。同期や先輩教師にどれだけ救われ、また勇気をもらったことか、ただただ感謝している。
専門は、教育社会学。教育史や歴史社会学を援用しながら、近代教育システムと階層文化の形成について論考を続けてきている。著書(共著)に『不良・ヒーロー・左傾-歴史社会学考察-』(人文書院)、など。

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