「国際共通語としての英語」というとらえ方

2017年09月19日

世界中に7千あると言われる言語のうち、現代の最先端の技術に用いられる言語はごく限られています。学術、経済を率いる国(人々)、武力をもって制するなど、いわゆる「権力」を持つ人々が使用した言語は「覇権言語」として広まり、紀元前からもその姿はありました。そしてその言語は「媒介言語」となり、母語の違う人たちのコミュニケーション手段となります。我々が生きる現代はこの位置に英語が存在します。
 
「国際共通語としての英語 」の概念ですが、異なる母語を持つ話者同士が唯一の共通するコミュニケーション手段として英語を使用し、英語が共通語の概念を持つことを言います。英語の母語話者の数は3.5億から4億人と言われ、非母語話者で英語を第二言語として使用する、生活言語とできる英語ユーザーの数はおよそ20億人と言われています。つまり、かなり多くの非母語話者間で英語を「媒介言語」としてのコミュニケーションが存在することになります。
 
私たちの身近な例をあげてみます。北陸新幹線の開通で海外からの旅行者が東京—金沢—関西のそれぞれ移動時間が等しく2時間半の正三角形の頂点として経由選択地とするようになり、多様な国々の旅行者が大挙して往来するようになりました。英語メニューを置く鮨店でアイスランド人、日本人、イタリア人、メキシコ人が客同士英語で話すという場面に実際に遭遇します。地域の観光業の職に就く者は、世界に広まった多様性のある英語(Varieties of English)に接することになります。地域企業はASEAN諸国に工場や提携先、子会社を置いており、ASEANの公用語としての英語(Asian Englishes)を扱うことになります。
 
このような「国際共通語としての英語」を意識すると、英語ユーザーになるために必要なことも見えてきます。
英語ユーザーになることの目的、意義を知る、認識すること、コミュニケーションを図る相手を意識すること、地域を知る、自国を知る、自文化を知ること、近隣諸国を知る、世界を知る、他文化を知ること、「英語」という言語の本質を知ることがとても大切なことと考えています。
 
そして、私たちの母語は日本語で、思考はその母語で行っています。思考の上に重ねて合わせる英語運用能力を構築すること、自身の思考を英語に変換できる力をつけていくことです。
相手との差異を認め、その背景にある文化や生活、考え方を理解しようと試みたうえで、自身を知ってもらおうとする努力をする力を備えた英語ユーザーになり、世界に視野を広げていきましょう。

大学

田中富士美
TANAKA Fujimi

プロフィール

金沢星稜大学人文学部国際文化学科 教授
専門は英語教育、国際英語論、言語政策

金沢市生まれ。
高校卒業以降、国内各地と海外に住み、30年の時を経て金沢に帰ってきました。
改めて住む故郷を客観的にも主観的にも捉え、遠距離からも近距離からも視点を持ち、地域の発展を更に願う心が生まれます。
金沢の美しい街並みや雅な伝統文化は誇りです。
               

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